中小企業や個人事業主が資金繰りの手段を考えるとき、よく登場するのが「ファクタリング」と「でんさい(電子記録債権)」です。
どちらも売掛債権に関連する資金調達方法ですが、仕組みや使い勝手、メリット・デメリットには明確な違いがあります。
本記事では、両者の違いをわかりやすく解説し、どのような場面で使い分けるべきかをご紹介します。
なぜこの質問が多いのか
最近は銀行融資に頼らず、柔軟に資金繰りを行いたいと考える経営者が増えています。その中で「ファクタリング」と「でんさい」は、売掛債権を活用できる手段として注目されていますが、名称や仕組みが似ており混同されやすいのが現状です。
特に「請求書を現金化できるなら、どちらも同じでは?」といった誤解も多く、正確な理解が求められています。
ファクタリングとでんさいの違い【結論】

ファクタリングは「売掛金を第三者に売却する資金調達手段」であり、 でんさい(電子記録債権)は「電子化された手形のような仕組み」で、債権を記録・譲渡する制度です。
大きな違いは、「資金化の方法」と「債権の性質」です。
ファクタリングは売掛債権を直接売ることで現金を得ますが、でんさいは債権自体を電子的に管理し、譲渡や割引を通じて活用するものです。
ファクタリングの特徴と仕組み

ファクタリングとは、企業が持つ売掛債権をファクタリング会社に売却することで、支払い期日前に資金を得る方法です。 即日ファクタリングといって、当日中に資金調達を行うことも可能な場合があります。
主に「2社間ファクタリング」(売掛先に通知しない)と「3社間ファクタリング」(売掛先に通知する)に分かれます。
- 審査が早く、最短即日資金化が可能
- 売掛先の信用力によっては赤字企業でも利用可能
- 資金繰り改善に即効性あり
- 手数料が高め(数%~20%程度)
- 売掛先との関係に影響が出ることもある
でんさい(電子記録債権)の特徴と仕組み
でんさいとは、2009年に始まった「電子記録債権法」に基づく仕組みで、紙の約束手形に代わる電子的な債権管理制度です。
債権情報を「でんさいネット(全国銀行協会が設立した機関)」に登録することで、譲渡・割引・分割などが可能となります。
- 手形と異なり印紙税が不要
- 期限前の譲渡や割引が容易
- 偽造や紛失のリスクがない
- 対応していない企業もある
- 登録・利用にあたって手続きが必要
- 現金化にはでんさいを買い取る金融機関との取引が必要
よくある誤解

「でんさいはファクタリングの一種」と誤解されることがありますが、法的な根拠も目的も異なります。
ファクタリングは売掛債権を「資金化する手段」、でんさいは債権を「電子的に管理・流通させる制度」です。即日ファクタリングは資金化を即日対応できる強みがあります。
また、「でんさいにすれば手数料がかからない」と考える方もいますが、譲渡や割引には一定の手数料が発生するため、無料ではありません。